ナノ量子構造の実現技術
深紫外から中赤外波長まで、幅広い波長領域において発光する量子ドットやナノワイヤなどナノ量子構造を分子線エピタキシや有金属気相成長により実現した。 また、2次元フォトニック結晶、3次元フォトニック結晶、ナノワイヤで構成されるナノ光共振器と量子ドットを融合することにより、新型レーザや共振器量子電磁力学のプラットフォームを実現している。なお、本研究室が対象としてきた主たる材料・ナノ量子構造は以下のとおりである。
- 窒化ガリウム系量子ドット・ナノワイヤ
- 砒化ガリウム系量子ドット・ナノワイヤ(GaAs/InP/Si基板上)
- 砒化ガリウム系量子ドットを埋め込んだナノビーム・2次元スラブ・3次元フォトニック結晶
量子ドットレーザと光電融合への展開
量子ドットおよびそのレーザ応用は、1982年に荒川と榊により提案された。QDレーザ(株)と共同で世界最高動作温度(220°C)の量子レーザを開発するとともに、ナノワイヤ量子ドットレーザや3次元フォトニック結晶量子ドットレーザなど、新奇レーザを実現した。また、FIRSTおよびNEDOプロジェクトにおいて、量子ドットレーザ搭載型シリコン光集積回路を作製し、量子ドットレーザのシリコンフォトニクス(光電融合)の有用性を明らかにした。この成果は、アイオーコア社の光I/Oコアチップの原型となった。さらに、シリコンMBE直接成長によるシリコン上(100) ジャスト基板上直接成長量子やウェハ融着法を用いたシリコンハイブリッド量子ドットレーザを作製した。
ナノ量子フォトニクス
量子ドット技術に立脚にした量子フォトニクスの発展に貢献している。富士通研究所と共同で開発した通信波長帯InAs/InP量子ドット単一光子源を用いて、NECとも連携を図りながら120km超の世界最長距離(当時)の量子鍵配送実験を行った。また、室温動作可能な半導体単一光子源を追求し、GaNナノワイヤ量子ドットを用いることにより半導体単一光子源としては世界最高温度である350Kを達成した。さらに、SOI基板上でシリコン導波路に結合するInAs/GaAs単一光子源を転写プリント法を用いて実現した。
量子ドット共振器量子電磁力学研究
1992年、世界に先駆けて、固体中での強結合(ラビ分裂)を半導体垂直型ナノ共振器で観測することに成功している。この成果は、今日の半導体共振器電磁力学の原点として位置付けられている。また、量子ドットフォトニック結晶ナノ光共振器結合系において、量子ドット系としては最高値の真空ラビ分裂の実現や、強結合状態をベースにした単一量子ドットレーザや高効率2光子発生素子の実現などに成功し、固体量子電磁力学の新たな境地を拓いた。